「骨形成不全症」の概念
骨形成不全症とは、易骨折性・進行性の骨変形などの骨脆弱性を示す病状に加え、様々な程度の結合組織の病状を示す先天性の疾患である。
骨形成不全症は一般的には結合組織の主要成分であるI型コラーゲンの質的ないしは量的異常が原因の遺伝性疾患である。
骨形成不全症は、臨床病型の類型化が試みられ、Sillence分類をはじめとした実用的な分類がいくつか報告されている。
しかし、全症例を完全に類型化することは不可能で、臨床像は非常に多様であるこが、本症の特徴ともなっている。
臨床像の多様性に相当するように、I型コラーゲンの異常も多岐に及び、分子異常の種類と重症度の間にある程度の相関がある。
骨形成不全症の臨床像は非常に多彩で、生まれてすぐに死亡してしまう重症型から、偶然発見される殆ど無症状の症例まで認められる。
臨床症例は易骨折性・進行性の骨変形などの長管骨の骨脆弱性と脊椎の変形に加え、成長障害、青色強膜、象牙質形成不全、難聴、関節・皮膚の過伸などの病状を認る。
Sillenceは、合併症である青色強膜、象牙質形成不全の有無により臨床像の臨時分類を行っており、疾患の臨床像をある程度把握可能である。
診断はⅠ型コラーゲンの遺伝子異常が固定されれば確定されるが、巨大な遺伝子であること、I型コラーゲン遺伝子の異常を認めない例も存在することが示されており、遺伝子診断には限界がある。
実用的には骨密度が低下していることが示されており、特に腰椎の骨密度の低値が診断に重要である。
臨床像・レントゲン所見・骨密度の評価を合わせ総合的に診断を行っているのが現状である。
治療は確立した方法はなく、病例毎に試行錯誤が繰り返されることが多い。
手術的治療としては、髄内釘による長管骨の骨折変形予防、変形の骨切矯正、脊椎の後方固定術などが行われる。
重症例については、整形外科的な十分なサポートの上に慎重な理学的治療法が必要とされる。
薬物療法ではカルシトニンに加え、最近ではビスフォスフォネートの有効性が示され、先進的医療としては骨髄移植の有効例も報告されている。
いずれの治療法も、個々の病例において、慎重な判断のもと、行われるべきであり、すべての病例に共通した治療法がないのが骨形成不全症の特徴であり、治療にあたっては長期的な予後まで考慮した慎重な判断が必要である。
疫学
発生頻度は約2万人に1人という報告が多い。
Sillence Barlowはオーストラリアでの発生頻度を臨床病型別に検討し、『I型:2.8万人に1人』、『II型:6万人に1人』、『III型:約7万人に1人』、『IV型:20万人に1人』と報告している。
実際の患者発生頻度を正確に把握することは困難で、特に軽症例のⅠ型は家族の発生によりはじめて明らかになる場合も多く、発生患者を全例把握することは困難である。発生頻度に地域・人種差はないとされている。
※『骨形成不全症診療の手引き』(厚生省研究班「小児運動性疾患の介護等に関する研究」より抜粋)